みなさまは「分骨」という言葉を耳にしたことはありますか?
分骨とは、故人の遺骨を分けて別のお墓に納めたり、小さな骨壺に入れて仏壇にお祀りしたりすることです。
ただ人によっては…
「魂は一つなのに遺骨を分けるなんて…」
「法律的に違法なことなのでは…」
など、否定的な意見や疑問に思うことも多いのではないでしょうか。
そこで本日は、「分骨について」詳しく解説したいと思います。
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分骨とは
遺骨の一部を別のお墓に埋葬したり、ご自宅に遺骨の一部をお祀りするなど、二か所以上に分けて埋葬・供養することを「分骨」といいます。
分骨を希望する理由としては、以下のようなケースがあります。
●宗派の総本山に納めたいとき
●先祖代々の墓地が遠方にあり、近くのお墓にも納骨したいとき
●兄弟それぞれの家庭でお骨を分けて供養したい
●結婚した娘の遺骨を生家の墓地にも納めたいとき
●お遺骨の一部を手元供養としてお祀りされたいとき
分骨するタイミング
ご家庭によって分骨する理由は様々ですが、ではどういった場面で分骨を行えばいいのでしょうか。
以下では、分骨のタイミングを状況別にご説明いたします。
納骨後に遺骨を分骨する場合
納骨済みの遺骨を分骨希望される際には、まずお墓のある寺院や霊園に分骨の意向を伝えます。
寺院によっては、墓の掘り返しによって墓地が荒れることを気にして、同意いただけない場合もあります。
しかし、法律上では寺院は分骨を拒否することはできません。
依頼する際は、寺院の事情を十分に考慮し、できるだけ穏便な方法で同意を得られるように計らうべきです。その際、寺院には感謝の気持ちとして「お布施」を包まれるといいでしょう。
火葬の際に分骨する場合
火葬の際に分骨を希望される場合は、事前にその旨を葬儀社に伝えておくことが必要です。
伝えておくと、納骨用の骨壺とは別に、小さめな分骨用骨壺や覆い袋を用意してくれる葬儀社もあります。
また、火葬場にもその旨を伝えておいてくれるので、骨上げの際に係員が分骨用の遺骨をより分けてくれます。
納骨の際に分骨する場合
分骨は、墓地への納骨の際にもおこなうことができます。その場合は、分骨用の骨壺などを用意していき、僧侶にお願いして分骨してもらいます。
納骨法要の際、お経を読み終えた時点で遺骨を分けます。
分骨証明書の入手方法について
分骨し別の場所でお骨を供養するためには、分骨証明書が必要です。では、分骨証明書はどこで入手すれば良いのでしょうか。
ここからは、分骨証明書を入手する方法について紹介していきます。
火葬場で発行してもらう
お骨を火葬した後に分骨する場合は、火葬場で分骨証明書を発行してもらいましょう。
火葬場で発行してもらえる分骨証明書は「火葬証明書(分骨用)」というものです。火葬を依頼する時に、火葬場の職員に分骨することを伝えると発行してもらえます。
火葬前に分骨することが決まっている場合には、事前に葬儀社に伝えておくことでスムーズに分骨証明書を発行してもらえるでしょう。
自治体の役所で発行してもらう
火葬が終わった焼骨を納骨前に分骨する場合は、自治体の役所で分骨証明書を発行してもらえます。
また、一度発行した分骨証明書を紛失してしまった場合は、自治体の役所で再発行可能です。
自治体の役所で分骨証明書を発行してもらうためには、分骨証明申請書や身分証明書が必要になります。亡くなられた日や火葬した日が分からない場合には、再発行に時間がかかってしまう可能性があるため、事前に調べて手続きに行きましょう。
納骨した寺院や霊園で発行してもらう
一度、お墓に納骨したお骨を分骨したい場合には、墓地がある寺院や霊園に相談し、管理者立会いのもと取り出し、分骨証明書を発行してもらいましょう。
墓石は重く、自力でお骨を取り出すと破損する恐れがあるため、事前に分骨する旨を石材店に相談しておくことをおすすめします。
分骨証明書が必要になるケース
お骨を分骨し別の場所で供養するためには、分骨証明書が必要になるということが分かりました。しかし、具体的にどのようなシーンで分骨証明書が必要になるのでしょうか。
ここからは、分骨署名所が必要となるシーンについて紹介していきます。
お骨の埋葬時
お骨の埋葬時に分骨証明書を提示しなければなりません。
分骨証明書を提示できなければ、寺院や霊園から受け入れを拒否されてしまいます。お骨の埋葬場所が決まったら、速やかに分骨証明書を発行するようにしましょう。
海や山への散骨時
故人の希望によりお骨を海や山へ散骨する場合には、分骨証明書を依頼する会社に提示しましょう。
散骨する場合の分骨証明書の提示は、法律で定められた義務ではありません。しかし、分骨証明書を提示しなければ事件性の疑いが否定できないとして、散骨を拒否されてしまうことがあります。
永代供養時
永代供養とは寺院や霊園が遺族や親族、子孫に代わり先祖を供養する埋葬方法のことを言います。
永代供養はお墓と変わらないものであるため、墓地、埋葬等に関する法律施行規則に従い、供養を依頼する寺院や霊園に分骨証明書を提示しなければなりません。分骨証明書の提示がないと、永代供養を断られてしまう可能性があります。
永代供養を依頼する寺院や霊園が決まったら、分骨証明書を発行しておきましょう。
手元供養するための「手元供養品」作成時
お骨を手元供養する際は必要ありませんが、手元供養品を作成する場合は提示を求められる可能性があります。
散骨時と同様に、手元供養する場合に分骨証明書が必要という法律の規定はありません。しかし、手元供養品の制作会社が事件性のないお骨であるということを確認するために、提示を求めていることがあります。
分骨証明書がないと制作を断られることもあるため、依頼前に発行しておきましょう。
分骨前のお墓に戻す時
一度、分骨したお骨を元のお墓に戻す場合、事件性のないお骨であることを証明できれば分骨証明書なしに納骨が可能なこともあります。しかし、管理の厳しい公営霊園などでは、分骨証明書がないとお骨を戻せない可能性が高いでしょう。
分骨したお骨を分骨前のお墓に戻す時には、分骨証明書が必要だと思っておきましょう。
分骨する際の注意点
分骨する際は、以下に注意しましょう。
●親族の了解を得ておく
分骨については、人によって様々な考え方があります。なかには「分骨は絶対にダメ」という親族もいるかもしれません。「勝手に分骨した」などと後々トラブルに発展しないよう、親族の了解をしっかり得てから行うようにしましょう。
●遺骨の大事な部分を把握しておく
遺骨のうち、仏教で一番大事とされるのが「喉仏(のどぼとけ)」の部分です。骨の形が、仏様が座禅を組んで合掌しているように見えるため、「喉仏」という名前がついています。
一般的に、本山納骨においては、この喉仏を含んだ遺骨の一部を本山へ持参する習わしがあります。分骨するときには、喉仏の部分をどのお墓に納めるか、親族に相談してから決めると良いでしょう。
分骨について 【まとめ】
分骨は、違法ではありませんが、上述のように分骨証明書の発行が必要になったり、親族への配慮が必要になったりします。信仰の対象である故人の遺骨を分ける行為ですから、特別丁寧な対応を心がけましょう。
「分骨すると成仏できないから良くない」
「分骨は縁起が悪い」
ということを聞いたことがある方もいるでしょう。
これは、お骨には魂が宿るため1か所に埋葬することが望ましいという考えや、仏教には輪廻転生という、人は死んでも生まれ変わるという考えがあるためです。
分骨すると魂とお骨がばらばらになり正しく生まれ変われないと信じる方から、分骨はやめた方が良いと言われることもあります。しかし、これは迷信であり、分骨することは良くないことでも縁起の悪いことでもありません。
四十九日の法要が行われると、魂はお骨から離れて旅立っていくとされています。お骨に魂が残っていないため、魂が迷子になってしまうことはないので、分骨をしようか悩んでいるのであれば、この記事を参考にしていただけると幸いです。
本日は以上となります。最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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