お位牌は亡くなられた方の魂が宿るとされる、仏教では欠かせないとても大切なものです。
しかし、お位牌には形や材質などさまざまな種類があり「どのように選べばいいのか解らない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで本日は、伝統的なお位牌の違いや特徴などを詳しくご説明したいと思います。
これからお位牌を選ばれるお客様の、参考にしていただけると嬉しいです。
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👇以下の記事では「お位牌の作り方」「戒名について」解説しております。
戒名を書き入れられる仏具の種類について
故人様の戒名や命日を書き入れられるのはお位牌だけとは限りません。
以下では、用途に合わせた戒名を書き入れることのできる仏具をご紹介致します。
●板位牌
故人様をお祀りするために1名につき1つ作成する、最も一般的な形のお位牌です。新しく位牌を作る場合は、この板位牌を選ばれる方がほとんどかと思います。
特徴として、台座に札板を刺した形が多く、故人のために個別で作られるものです。通常はひとつの位牌におひとりの戒名や俗名などを記載します。
ただし、ご夫婦の場合は1つの板位牌(夫婦位牌)に連名で戒名などを記載し、作成する場合もあります。
●回出位牌
回出位牌とは6~8名様程のご先祖様を1つにまとめ、お祀りすることができるお位牌です。
特徴として、お位牌本体の中に戒名などを記す木札が5~10枚ほど入っており、複数あるご先祖様の板位牌を1つにまとめることができます。主に、板位牌が増えて仏壇に入りきらなくなってしまった場合に、作り替えで作成される場合が多いです。
●回出位牌作成時の注意点
・浄土真宗では、新仏様の場合でも板位牌ではなく回出位牌を先に作成する場合があります。位牌作成の際は、菩提寺のご住職やお身内の方に確認してみましょう。
・中に入っている数枚の木札の内、1枚は表書きとして使用するのが一般的です。全ての木札に戒名を書き入れないよう注意しましょう。
●過去帳
故人さまの戒名(法名)・俗名・没年月日・享年(行年)を記す帳面で、主に記録紙の意味合いが強い仏具です。
浄土真宗では、位牌は作らずにこちらを用いることが多く、お祀りされる場合は「見台」と言う専用の台に乗せ、仏壇の中に設置するのが一般的です。
最近は、表面を蒔絵や絹張りで仕上げてあるものも多く、モダンなお仏壇にも合わせやすいよう改良されています。
お位牌(板位牌)のデザインについて
お位牌には様々なデザインがありますが「必ずこれでなくてはいけない」という決まりはありません。
お位牌は故人様の象徴となるものなので、生前のお人柄やイメージに合わせてお選びいただくのが良いでしょう。また、お仏壇の雰囲気に合わせたり、既にお祀りされている先祖位牌に形を合わせていただいても問題ありません。
以下では、お位牌のデザインの一部をご紹介致します。
●伝統型位牌
昔ながらの伝統的なデザインで作られたお位牌で、一般的に「お位牌」と聞くとこちらをイメージされる方が多いのではないでしょうか。
黒檀や紫檀などで作られた伝統的な仏壇と調和しやすく、漆や金箔などを使い重厚で華やかなスタイルが多いです。
また、材質や台座・足の形が違うなどデザインの種類が豊富にあるのも特徴です。
●モダン位牌
最近の、家具調仏壇に調和するようデザインされたお位牌です。従来の位牌にはない色合いや形で仕上げられており、リビングなど洋室に合いやすい「おしゃれでシンプルなもの」が多いです。
また、材質も木製から天然石、クリスタルなど幅広い材質で作成されています。小さなミニタイプのものも多く、形やデザイン・色に制約がないことが特徴です。
★本記事では、主に「伝統型位牌」についてご紹介しております。
漆塗り位牌の種類(塗りや材質による違い)
塗位牌には塗りの種類が大きく分けて3種類あります。また、塗り位牌とは別に唐木位牌という木目を活かしたお位牌があります。
以下では、それらの位牌の製造工程や、材質の違いをご紹介致します。
●塗位牌
油を加えない精製漆「無油漆」を用いて仕上げたお位牌です。
基本的な工程は上塗位牌と同じですが、上塗とは異なり艶はなく落ち着いたマットな仕上がりが特徴です。
●上塗位牌
光沢のある上質な精製漆が使用されているお位牌です。
呂色塗りに近い美しい鏡面のような質感を表現しており、熟練した塗師が丹念に仕上げたものが上塗り位牌です。呂色よりも工程は少ないですが、柔らかな光沢のあるふっくらとした仕上がりはとても綺麗です。
●呂色位牌
塗面を炭で研ぎ、さらに油分を含有しない漆を塗り研磨することで鏡面の様な深い光沢に仕上げたお位牌です。
伝統的技法を用いた数多の工程の中、塗りと磨きを何度も繰り返して平滑にし、わずかな塵の付着も許さない気品ある輝きを放つ最高級の仕上げ方法です。
●唐木位牌
黒檀や紫檀などの「唐木材」を材料につくられたお位牌です。
上品な塗装と唐木特有の木目が美しいお位牌です。
位牌のサイズを選ぶ
お位牌のサイズは、基本的に「寸」単位で表されます。(1寸=約3センチメートル)この寸法はお位牌の札丈(札高さ)を指しています。小型のお仏壇なら3.5~4.0寸、中型のお仏壇なら4.5寸、大型仏壇なら5.0寸以上が目安となります。
また、位牌サイズを選ぶ際には下記のような注意点もあります。
●仏壇やご本尊のサイズに合わせて選ぶ
お位牌を安置するスペース(通常お仏壇の上から二段目の左右)に問題なく収まり、かつ小さすぎないサイズのお位牌が理想です。
また、ご本尊(お仏像や掛軸)の背丈を越してしまわないサイズのものを選ぶようにしましょう。
●既にお持ちのお位牌に合わせて選ぶ
ご先祖様のお位牌がすでにある場合は、そのお位牌と同じくらいか、もしくは少し小さいサイズで作成するのが一般的です。
仏壇店などで購入される際は、ご先祖様のお位牌を持参するか、写真を撮ってサイズも測っておくのがよいでしょう。
●水子位牌の場合は小さめのものを選ぶ
お子様のためのお位牌(水子位牌や赤ちゃん位牌)を作成する場合には、小ぶりなサイズのお位牌を選ぶのが一般的です。
2.5~3.0寸程度のお位牌が良いでしょう。
伝統型位牌の種類
●春日型
もっともシンプルな形状で、飾り気のない佇まいが印象的な春日型位牌。
黒塗りと金で仕上げられたタイプのものから、黒檀・紫檀の無垢材を使用して作られたもの、会津塗りで仕上げられたものなど、シンプルな作りながら幅広い種類の商品があります。
伝統的な台座の形ひとつで、凛としたデザインが職人の手作業による漆塗りの精巧さをより際立たせます。
●蓮華付春日型
春日型の台座に蓮華を施した、シンプルな中にも華やかさをプラスしたのが蓮付春日型です。
江戸時代から伝わるもっとも歴史のある形で、台座部分の蓮をかたどった彫りは、先人によって「春」をイメージして作られたとされる伝統のある形のお位牌です。
●勝美型
こちらの勝美型は、東京の位牌職人・石井『勝巳』さんが発案したとされ、その名がつけられました。札の頭は木瓜型で、春日型のような半円型とは異なります。
また、春日型の台座に前垂れを付けたような形となり、一番の特徴は台座に「金虫喰い」と呼ばれる漆塗りの技法が施されている事です。
札受けの四角の台座にも装飾があり、伝統的なお位牌の中でも非常にデザイン性が高いお位牌です。樺色の鮮烈さがお仏壇の中で存在感を発揮します。
●葵角切型
葵紋の切込をイメージして作られた、牌身頂部の平頭形の両肩に切込を入れた形が特徴のお位牌です。台座も角の部分を落とし、台座上の繊細で滑らかな装飾が優しい印象を与えます。
また、台座中央部分の虫食い塗りという漆塗りの技法や、台座下の前垂れもアクセントになっており、伝統的なお位牌の中でも細部にこだわり作られています。
●猫丸型
猫丸型は江戸時代から伝わる歴史深いお位牌で、脚の形が猫の後ろ足のように丸まっていることからこの名が付きました。
種類には、台座部分の前・左右の3面に金箔を施した三方金猫丸や、装飾を豪華にした上等猫丸などがあります。
猫丸には「慕われる生き方だった」という意味が込められており、古くから愛されてきた形です。
また、ずっしりとした重厚感があり、お仏壇に入れることで際立った存在感があります。
札板も広いことから夫婦で同じ位牌に入る「連名位牌」を作る場合におすすめです。
●千倉型
千倉型はスマートなたたずまいの上品な形です。
特徴的な曲線を持つ台座は柔らかく優しい雰囲気を生み出します。
また、千倉型は「京型位牌」や「西型位牌」と呼ばれ、西日本に多く見られる形のお位牌です。
※東日本の方が作って頂いても大丈夫です。
●二重呂門型
二重呂門型はシンプルな造形が特徴のお位牌です。
古くからある伝統的なデザインですが、彫刻が少なく直線的な形は、どんなお仏壇にもよく似合う洗練された美しさがあります。
呂門という言葉は「楼門」からきており、台座部分が口の文字に似ているため呂門と呼ばれるようになったと言われています。また一説には「この世とあの世を繋ぐ門」という意味もあるそうです。
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